中村彝

お久しぶりです。カミハクです。今回は次回の企画展「日本近代洋画の美ー紙業界コレクションー」展についてご案内します。
http://www.papermuseum.jp
9月18日〜11月28日

紙業界のコレクションから近代日本人の洋画26点が出品されますが、そのうち中村彝の作品が2点あります。

中村彝 名作「エロシェンコ氏の像」国立近代美術館蔵が重要文化財にも指定されている彝。37歳という若さで逝ったその生涯は少年期から肺結核と闘いながらのものだった。特に晩年は起きては描き力尽きては臥せるという絵画の制作だけが生きる証しのような生活だった。

今回この企画展の為に 彝の生涯をたどり、その画集に触れるほど、ここまで追求した画家がいたのか。とどんどん惚れ込んでしまった。
生活の為でもなく、名誉や私利私欲の為ではもちろんなく、ただ絵が描きたい。もっともっと芸術の真髄に迫りたいという欲望や要求はある意味絶望的な病がもたらしたものかもしれないが、デカダンスに陥っている閑などないほど、ひたすら息をするがごとく絵を描き続けた。

生涯芸術を追求しつづけたので、その作風も新しい風を取り入れて変化したが、実物に忠実な写実の画家であることには変わりがなかった。『読書』明治44年はいわゆる中村屋サロンに入る直前のもの。彝としては明るいルノアール調の色彩のもの。もう1点の『静物』大正8年は中村屋を出て下落合のアトリエにて制作を始めた頃。病も日に日に重くなるが、芸術を追求する気持ちは治まらず制作上の新しい試みを取り入れたとされるどちらかといえば実験的な画面である。

医者からあと一月といわれてもそれ以上生き、関東大震災で被災するも、命はとりとめ、もはや死を客観視できるほどの境地に至った彝だけど、まだまだ生きたかったことだろう。もし渡欧していたなら、健康であったなら いったい彝の芸術は生まれたのだろうか。あるいはどのように変化していたのだろうか。

会期中には 茨城県近代美術館学芸専門員の舟木力英氏による講演会「中村彝とその時代」11月3日(祝)13:30〜15:00 が開催されます。
(要 申込み) 中村津ファンは ぜひどうぞ!!